つゆはなぜ梅雨と書くのか

中国語では黴雨と書いていたが同じ音の梅雨と書くようになった。

 

この説がいいかな

 

漢字の「梅雨」ですが、実は中国語の辞書にものっています。「梅雨」と「黴雨」。読み方(メイユーと発音するそうですが)も同じ。前者は「黄梅雨」とも書かれており、梅の実が熟すころの雨、後者はかび(黴)の生えやすいころの雨という意味になるそうです。

唐の時代の太宗の詠んだ詠雨という漢詩に、
和氣吹緑(※)野,梅雨灑芳田。新流添舊澗,宿霧足朝煙。
雁濕行無次,花沾色更鮮。對此欣登歳,披襟弄五弦。
というものがあります。2節目に「梅雨灑芳田。」(梅雨が芳田(いい匂いの田という意味のようですから麦畑を指していると思われます。春の麦の収穫時期がちょうど6月頃になります)を潤す)と書かれており、唐の時代には、「梅雨」という漢字が使われていたようです。

さらに、1500年代終わりごろに中国の李時珍とう学者が書いた「本草綱目」という本草学の本に「梅雨或作黴雨,言其沾衣及物,皆生黒(※)黴也。」(梅雨・黴雨は、服や物をぬらし、皆黒かびが生える)という表記がありますので、少なくとも約400年前には「梅雨」「黴雨」という二つの漢字を使っていたようです。

どちらにせよ、中国から渡ってきた漢字と意味を(ちなみに植物の梅も中国が原産で、遣隋使(あるいは遣唐使)によって日本にもたらされたという説が有力です。)そのまま、日本の気候に当てはめたというのが正解のようです。

さて読み方ですが、江戸時代の著名な学者、貝原益軒も監修をつとめた「日本歳時記」(1688年)には「此の月淫雨ふるこれを梅雨「つゆ」と名づく」という表記があります。どうやら、今の季節の長雨のことを一般的に「つゆ」と呼び始めたのは江戸時代になってからのようです。

文中の(※)部分はそれぞれ旧字体の緑と黒です。

https://www.ebayama.jp/merumaga/20080601.html